大賞は該当作品なしとなります。
『勇者のオマケだったので、異世界を自由に旅することにした ~旅立ちの王都編~』
《2025年10月10日(金)発売予定》
持ち物は、小さな鞄と好奇心、それから魔術の才能だけ。
〈使命〉(クエスト)には縛られない気ままな異世界バケーション。
「この世界を自由に旅してみようかと思うんですが、いいですか?」
同僚の巻き添えで異世界に召喚されてしまった会社員のハイリ。同僚の神田さんが魔王を倒すまで好きに過ごしていいと言われた彼女は、せっかくだからと異世界を巡る旅に出ることに。
類い稀な魔術の才能を駆使して、魔獣猟団のお手伝いをしてみたり。仕事終わりに異世界グルメを堪能してみたり。喋る猫の詩に耳を傾けたり。輝く大河で宝石を採ったり、悪党と大立ち回りをしてみたり!?
加護にも使命にも縛られない、自由気ままな異世界バケーション、開幕!
※本講評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。
旅するためのお金を稼いだり、その過程で人との出会いがあったり、のんびり、だけど戦闘も入ったファンタジー作品です。
自由に世界を見て回る選択をできる主人公は格好いいと思います。
キャラの深掘りがあると、もっと魅力的になるのではないかなと思いました。それと同時に、一緒に召喚された勇者の動向などわかると状況が見えやすいです。
個人的には、勇者とのやりとりがもっと見たいなと思いました。
たいへん面白く読ませて頂きました。
話の切り口も良く、読みやすかったのですが展開が少しダラダラしてしまったかも知れません。
序盤にもう少しポイントが欲しかったのと、設定として勇者を登場させてるのに「一方その頃」的な描写があまりなく…それがあればもっと良かったと思います。惜しくも大賞とはなりませんでしたが、今後の活躍に期待したいと思います。
異世界への勇者召喚に巻き込まれた主人公が、勇者とは別行動をとって異世界に適応していく本作。
冒険者生活に対応していく流れが、やや淡々としつつもテンポよく描写され、楽しんで読むことができました。主人公は異世界では規格外の強さゆえに周囲から浮いてしまうほどですが、それによって魔物との遭遇戦での仲間が死んでしまいそうな緊張感や、最終的にその実力ゆえに周囲から忌避されるなど、シビアな展開が用意されているのもよかったです。一方で、勇者となった元同僚に対する扱いが、ドライすぎる印象を受けました。主人公がそういう考え方をする理由を深堀するなりしてキャラ性に昇華してくれると、より感情移入しやすくなるかもしれません。
勇者のオマケとして異世界に召喚されてしまった主人公。淡々とした性格やその世界に適応していく様子は面白いと思いました。明確な任務もないオマケ主人公が選択したのが「異世界での一人旅」。旅先で出会うキャラクター達の性格や現世と異世界での微妙な価値観の違いも丁寧に描かれていて、異世界ウンチクにも納得感とリアリティーを感じました。願わくば勇者として召喚された同僚側のエピソードや現世での関係性を描いてほしかった。舞台設定やキャラクター達の表情やリアクションを補強してコミカライズで見てみたいと思いました。
『転生のらねこ薬師さんのひみつのレシピ ~天才パパとしあわせカフェ、開店にゃ!~』
《2025年11月10日(月)発売予定》
訳アリ猫耳幼女×うさんくさ魔術師パパの契約親子生活!?
効果は秘密のポーションレシピで、み~んな幸せにゃ!
社畜生活の末に命を落とし、プレイしていたゲーム世界の猫耳種族として転生したミルシェット。ハードな境遇を生き抜くも、ひょんなことから家も保護者も失ってスラムに放り出されてしまうハメになり……
「私の養女になりませんか」
天才だけれど胡散臭い、元宮廷魔術師のクリフォードに救われ、ミルシェットは偽装親子として田舎町でカフェを経営して暮らすことに。
住民が抱えるお悩みを、転生知識と彼女だけが作れるポーションの力で解決してゆくミルシェット。やがて彼女がふりまく優しさは、周囲の人々の運命まで変えてゆく! 幸せあふれるカフェストーリー、開店!!
※本講評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。
とてもおもしろかった。
ソシャゲ世界転生という事でご都合主義やゲーム的なスキル云々のある世界かと思いきや、ちゃんと「現実」として厳しくシビアな面のある世界で、それをミルシェットのみーみー可愛い視点で見せてくれるからするっと入り込めた。
ビッグボスとの関係についても最終的にこういう持っていき方にしたのはとても好感触。悪いやつだからぶっ飛ばして終わり! ざまあみろ! だけがハッピーエンドじゃないのだ。
今後ますます色々広がっていくだろう物語に期待。
赤ん坊からどうにか生きようとする姿がたくましくて、でも主人公の可愛い一面もある作品です。
カフェの経営と、ポーション作り、まったりと見せかけて実は戦闘や生き様などなかなかハードな物語で、大丈夫かハラハラしてしまうシーンも。
細かい設定などを上手く組み込んで見せることができたら、さらに作品がよくなっていくと思います。
個人的には、もっとポーション関連の描写があると嬉しいです。
最初は猫耳幼女で語尾が良い感じだ!と思って読み始めたのですが…ちょっとお腹一杯になってしまいました(笑)
ゲームの世界としての設定を活かしきれてないように感じてしまいました。
もっとゲームでは〇〇みたいなポイントが欲しかったのと、個人的には相方とののんびりカフェの描写、キャラの凸凹コンビ的な描写が欲しかった。面白く読めたのにキャラの拡がりや描写、設定を活かしきれてないのが勿体なく感じての銀賞です。
ゲーム世界に転生した主人公のミミ太郎ことミルシェットが、あまり恵まれない生い立ちに負けず、したたかに可愛く生き抜いていくストーリー。まずは主人公の造詣や言動があざとくも可愛いのが好印象でした。訳アリ魔術師ことクリフォードとの契約親子関係による、まったりカフェ運営も展開的に楽しく読めました。ラストのピンチからの逆転劇と、単純にざまぁするわけではなく、少ししんみりしていい話っぽくまとまった流れも良い読後感だったと思います。
劣悪な環境で育ったネコミミ少女が生きていくために奮闘する姿は微笑ましくもあり、その反面、ハードな世界観もバランスよく描かれている印象。前世での知識の活用が「アプリゲームの攻略法」と限定的なので、もう少し幅があっても良かったかもしれません。擬似父親との関係性やカフェ運営など話は淡々と進みつつも、弟子の登場や危険が迫ってくる演出は好印象。劣悪環境のボス、擬似父親と二人の庇護者に対してのネコミミ少女の心情の見せ方が秀逸だったと思います。
『わたしの番犬は過保護です。』
《2025年12月10日(水)発売予定》
近ごろ物騒なので、番犬(騎士)と契約同棲はじめます。
おしかけ騎士とのロマンスファンタジー!
「この子がブラッド。あなたの番犬よ」「この人、犬じゃないですよ!?」
街の服飾店で働くルーシャは、ひょんなことから『番犬』として雇われた粗暴な青年ブラッドと同棲生活を送ることに!
慣れない生活でお互いを意識するうち、契約を越え近づいてゆく二人の距離。謎の魔術師ジャックも現れ、いつしか関係は複雑になる。
だが、この時のルーシャは知らなかった。少し変化して見えた日常の裏で、自分を巡り大きな陰謀が渦巻き、世界の運命すら変わっていっていることを。そして自身に秘められた驚愕の真実を……。
平凡な針子と過保護な番犬の、ロマンスファンタジー!
※本講評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。
裏で色々陰謀策略渦巻く中で、突然同居することになってしまった男女の恋愛もの。
二人が徐々に徐々に戸惑いながらも歩み寄って共同生活をしていく部分については、恋愛ものとして、とても良かったと思う。
ただ周囲の人々の思惑やら何やらで、結局二人が利用されてしまっただけのように見えてしまうのはちょっと気にかかってしまった。
ルーシャとブラッド、二人の距離が少しずつ近づいていくところが大好きです。好きな人がいるのに惹かれてしまう気持ち、だけど最終的には好きになってもらえるんだよね!? という期待のあるドキドキが楽しい作品です。
設定部分のストーリーに関しては、もう少し盛り上がりや情報があるとより深みが出てきたかなと思います。
個人的には、二人で過ごす両片想いの日常生活をもっと読めたら嬉しいです。
個人的には好きな設定の話でした。ただ、恋愛物であればもっとキャラの感情を丁寧に描いて欲しい、そしてキャラ同士の会話を大事にして欲しかったと思います。最後の展開は賛否あり。終わり良ければ的な事なのかも知れませんが、描写の薄いキャラクターが最後で出てきて急展開と言うのは手抜きに見えかねないし、最後まで読んだ読者への裏切りと取られるかも知れません。好きな話ではありましたが銀賞とさせて頂きました。
じつは公爵家の血を引くらしいお針子ルーシャに、騎士団出身のブラッドが番犬役として護衛につき、お互いにだんだん惹かれ合っていく流れが可愛いストーリー。ただ、展開は比較的地味で、主人公が襲撃される事件などもありはするものの、全体としては起伏が弱めに感じました。またクライマックスで明かされるどんでん返しのせいで、読後感としては少しネガティブに感じるところもありました。主人公に隠された謎についてもやや唐突感があったので、物語の途中でもう少し伏線的なものがあるとよかったかもしれません。
公爵家の血を引くヒロイン、その護衛として同居することになる騎士団所属のヒーローとの恋愛物語。周りを囲む他のキャラクター達も二人に親身になってくれてると思いきや…。
謎の襲撃事件を起こす人物の動機や存在、ヒロインの能力の覚醒など、一部の要素を整理して、もっとシンプルに恋愛ストーリーとして読ませてほしかった。終盤の展開としては意外性があったものの、親身になってくれた親しい人物達の裏の顔が見え隠れして、物語としてのハッピーエンド感が薄れてしまったのがもったいなかったと思います。
蝸牛くも 小説家/代表作『ブレイド&バスタード』『ゴブリンスレイヤー』
きれいに丁寧に作られたファンタジー世界と、淡々とした主人公視点のギャップもの。
ちょっと淡々としすぎてて淡白になっちゃっている感は否めないけれど、それもまた味のひとつか。
周囲が困惑しているのに気づかないまま、マイペースを貫く主人公の姿勢は面白い。
ただ選考範囲では「旅」がまだ本格的に始まっていないので、そこをもっと見たかった。