魔物使いの娘 ~緑の瞳の少女~
(応募時『魔物使いの娘』より改題)
◆ 2024年12月10日頃発売 ◆
悪いのは、人か魔物か
〝伝説の魔女〟と共に歩む、面倒で素敵な旅路へようこそ――
かつて黒き竜が生み出した魔物たちを説き伏せ、従えたと呼ばれる魔女リングリーン。その末裔リーンも同じく魔物を従わせる能力を持っていた。そんな彼女に命を助けられた、魔女狩りの異名を持つ冒険者ハクラはある事情から護衛として雇われ、一緒に旅をすることになる。
特別な力を持つ彼女に舞い込んでくるのは、どれも厄介な魔物が関わる事件ばかりなのだが、実は魔物ではなく人間側にも原因があって……。
「人間って、ほんとにわかんない」
自信家でわがままで、だけどどこか放っておけない小悪魔な魔女と歩んでいく普通じゃない物語が始まろうとしていた。
※本講評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。
リーンが格好良い! リーンは何かやらかしそうだ、リーンに任せておけば大丈夫。リーンに絶対の信頼を寄せてしまう。そんなワクワクがずっと続き、読んでいて気持ちがいい作品です。
序盤でキャラの深堀はありませんが、キャラの個性はそれぞれきちんと立っていたためあまり気になりませんでした。掛け合いがとても楽しかったです。
まだまだ、もっと続きを読みたい作品です。
キャラクター同士のやり取りが心地よく一気に読めました。
話はキャラクターの軽快なやり取りとは反対に少しシリアスに展開しており、この辺りのギャップも面白さに繋がったと思います。
キャラクターの少なさはとても惜しいですが、設定としてはまだまだ入り口らしいので今後の展開次第でドンドン膨らんで面白くなると思います。
キャラクターの特性や世界観の伝え方が上手く、情報量のバランスも取れた作品で、非常にテンポよく最後まで没入させてもらいました。
キャラクター達の思考や倫理観は現代的で読みやすい反面、いい意味でこの世界ならではの“違和感”みたいなものがあると、より深みのある作品になるのかもと思いました。様々な面で “もっと“という気持ちにさせる可能性に溢れた作品でした。
世界で唯一の魔物使いの少女が、魔物関連の問題を解決していくファンタジー。主人公のキャラが非常に立っており、登場した時点ですでに好感触でした。また、独自色を出しつつもわかりやすく、広がりも感じられる世界設定も魅力的です。書籍1冊ぶんで起こるイベントは小規模ながら、ちゃんと事件解決編があって、読後感も心地よい。単純に魔物を倒して終わりではない、文化魔物学とも言えそうな視点からのアプローチが楽しい作品でした。
美醜あべこべ異世界で不細工王太子と結婚したい!
(応募時『美醜あべこべ世界で異形の王子と結婚したい!』より改題)
◆ 2024年10月10日頃発売 ◆
美醜逆転の異世界で、理想のイケメン見つけました!!
病で死にかけ、前世はイケメン大好きなオタクだったことを思い出した侯爵令嬢のココレット。今世では顔面チートな美貌と恵まれた出自で、イケメン王子様と恋愛&結婚できる!
……と思ったら、なんとこの世界はココレット好みのイケメンが化け物と蔑まれる『男性のみ美醜が逆転した世界』だったのだ!
めげずに自分を磨き、ようやく出会えた理想のイケメン王太子ラファエルに全力アタックをするココレット。だが彼には本気を信じてもらえない上、何故かオーク顔王子の婚約者候補に選ばれることとなり……!?
超ハイテンションで送る、美醜逆転の異世界ラブコメディ!!
※本講評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。
美醜逆転系、女性向け作品では珍しく感じた。文章は読みやすく、不安なく安心して読むことができたし、キャラも活き活きとして良い。子供だからこその考えの足りなさも含め、オークハルト王子が良いなと思っている。それだけにココが外見だけで「オーク顔」と見下してる描写はちょっと気にかかった。もちろん彼女がそれで相手を虐げたりはしない良い子なのはわかるが、ラファエル王子たちが「醜い」と虐げられてる横で、自分にとって醜い容貌の人を内心で罵っているのは……。そんなシリアスな話じゃないのでそれで良いのかもしれないが。
ココレットのテンションが高く、文章のテンポもよく、すらすら読み進められました。
おしいと思ったのは、序盤に地の文での説明が多かったことです。もっとキャラたちの掛け合いを書いていただけたら、この作品にぐっと読者を引き込めたのではないかなと思います。
オークイケメンたちにも、オーク、ゴブリン……顔によって何系統のイケメンというのには笑ってしまいました。
そしてラファエルなど、イケメン視点のお話が好きです。ここもっと読みたい! と思いました。ぜひたくさん書いていただきたいです……!
作品的には早々に決着がついてしまう事、逆転する展開等が無く、答えの見えた展開を読んでいる感覚になってしまうのが残念。途中で各キャラの心情を解説してしまっているのも悪手だと思います。
ですが自分はアニメ制作者として、この「価値観が入れ替わった世界」を描いてみたいと思いました。オーク顔は難しいですが動いて声が出れば面白さは倍増だと思います。キャスティングも楽しく出来そう。
価値観が逆転している世界を描くなら、他の面でも常識を外してくるような仕掛けがないと、どうしても俯瞰的に見てしまうというか、世界観へ入り込めない所があり、キャラクターについても好感度が高い反面、“内心では美醜で判断している”というこちら側の常識が感情移入を妨げている面もあります。掲げたテーマは面白いので、より多面的にアプローチできればさらによかったと思います。
男性の見た目についてのみ美醜の基準が逆転した異世界において、主人公は前世の記憶があるせいで、前世基準でのイケメンをゲットすることを目的に邁進していくコメディ寄りの本作。一見ルッキズムの権化的な主人公ですが、この世界におけるイケメンたち(オーク顔など)にモテまくって困惑しつつも、ちゃんと内面的な部分で評価するところは評価できるあたりは共感しやすく感じます。ただ、少しずつ登場人物が増えつつも、話がなかなか前に進んでいかない印象なので、一冊の作品として読ませることを考えると、もうひとつ大きな山場がほしいように思いました。
偽装死した元マフィア令嬢、二度目の人生は絶対に生き延びます ~神様、どうかこの嘘だけは見逃してください~
(応募時『神様、どうかこの嘘だけは見逃してください』より改題)
◆ 2024年10月10日頃発売 ◆
バッドエンド回避のため、嘘を吐き通します。たとえそれが相棒相手でも。
(だって、正体がバレたら殺されるから…!)
毒や薬で裏社会を牛耳るフェルレッティ家の令嬢ディーナは、偽装死によって家から逃れ、心を改め十年間別人として生きていた。しかし兄アウレリオの思惑でディーナは生家に戻ることになる――フェルレッティを断罪すべく潜入している軍人テオドロに協力する「ディーナの偽物」として。危険な兄や毒入りの食事。ハラハラする生活と共に少しずつ証拠は集まっていくが、実の所テオドロは一族全てを憎んでいる。なりゆきで彼に協力することになったものの、自分が「本物」であるとバレてしまったら。一方、どうやらテオドロには更なる秘密があるようで…?
〝嘘〟が紡ぐ、危険な異色やり直しラブロマンス、ここに開幕!
※本講評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。
極めてハイレベルでまとまっているし、現実のイタリア貴族やらマフィアやらを思わせる設定とストーリー、伏線回収とうとう実にお見事。実際のイタリア貴族やマフィアを思わせるシチュエーションを取り入れたのはオリジナリティが高いが、前半はキャラの感情の機微や背景設定など説明不足で、そこが少し気にかかった。ただもうひとりのディーナが現れての晩餐会から後半に入って一気に事態が動き、これまでの疑問点も解決していくので、そこからは一気に読むことができた。きれいに完結する映画を一本見た気分。
料理を食べる順番、体液……毒の設定がよいです!
文章自体は読みやすいのですが、時代背景がわかりませんでした。簡単でいいので、一言入っていると読みやすさがぐっと増すと思います。
ディーナが二人、という展開にワクワク期待していたのですが、あまり盛り上がらなかったのが残念でした。二人のディーナがどんなことをするか、もっと見てみたかったです。もう少しキャラや設定を深掘りしてもらえたら、ぐっとよくなるのではと思います。
終盤で明かされる、テオドロとお父さんのストーリーがとてもよかったです。
文章力が高く良く書けていました。毒を使ったマフィア?の生き方等、面白いアイディアも良し。
後半の畳み掛ける展開は見事でグッと引き込まれるものがあります。その分、前半のご都合展開が淡白に見えてしまいました。作品に漂うダークな雰囲気を冒頭からもっと意識して描写していけば、もっと完成度が上がり良くなったと思います。
前半の展開に対して後半で一気にスピードが上がっていく構造は、一本の映画を見たような読後感でした。まさに映画であればよかったのですが、読み物としてはどうしても前半に弱さを感じてしまい、冒頭から引き込む仕掛けがあれば、もうひとつ上の賞を狙える完成度だったと思います。
近代以降のマフィア的な組織を舞台にした世界観がある意味新鮮な作品。首領一家の名前を捨てたはずの主人公が、いろいろあって実家に戻ることになりつつ、じつはこっそりと潜入捜査をしていく緊張感のある設定が特徴的でした。少し強引に感じるところもあるものの、組織を支配する毒についてのユニークな設定や、キャラクター同士の過去の因縁、またマフィアものならではのショッキングな演出も含め、読者の期待にしっかり応えてくれる作品になっていたと思います。
勇者の旅の裏側で
◆ 2024年11月7日頃発売 ◆
魔王を倒す勇者の旅の
〝お約束〟の裏側。
『旅半ばで魔王の側近に襲われ、新しく選ばれた勇者は命を落とす』
勇者を助ける重要任務を神殿総本山から極秘裏に託された神官リュイス。その危険な任務の護衛を依頼するため冒険者の宿を訪れると、剣帝さながらの強さで暴漢を圧倒する女剣士アレニエと出会った。
「――私と一緒に……勇者さまを助けてください!」「……はい?」
そうして始まったたった二人だけの勇者を救うための旅。傷ついたり、助け合ったり、一歩ずつ進みながら少しずつその距離を縮めていく二人だが、互いに人には言えない秘密を抱えており……。
人々の希望の象徴として、表舞台を歩む勇者の旅路。その陰に、一組の剣士と神官の姿が見え隠れしていたことは、あまり知られていない。
これは勇者を裏側で支え、伝説の陰で活躍したもう一組の英雄――彼女たちの軌跡を巡る偉大で、たまに尊い物語のはじまり。
※本講評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。
もったいないにつきる。キャラは良いし、きちんとしたハイファンタジーでストーリーはとても楽しめたが、「大急ぎで勇者のために障害を排除しなければならない」はずの二人の旅がゆっくりと進んで緊迫感が無い一方、二人がおしゃべりしたり一緒に寝たりして仲良くなってる間に「二人の旅のさらに裏側」で動いている部分が多く、少し話が進む度に世界観説明が挟まってしまうので、テンポが悪く感じてしまった。ただ主人公二人の関係性や、終盤で明かされる勇者に対する気持ち、物語の締め方などはとても気持ちが良かったので読後感はとても爽やかだった。
リュイスの生い立ちエピソード、それを考察するアニエスの部分がとても好みでした!
世界観をきちんと作っていて、都度説明がされているので読みやすいですが、ちょっと説明の頻度が高すぎる……と思うところもありました。その点は、もう少しまとめてもらえるともっと読みやすくなると思います。
キャラの深堀があまりされていないため、感情移入のしづらさがありました。が、リュイスとアレニエの生い立ちは確かに序盤で出さない方が演出として魅力だと感じました。実はこれがよかった! と、後になって頷きました。
設定としては「一方その頃~」的な物。キャラはいい形で作られているが、地の文での説明や展開が多くキャラの良さを活かせていないのが残念でした。主人公の活躍ではない部分にページを割かれていたりして食い足りないと感じてしまいます。
魅力的なペアがもっと活躍や会話を出来れば面白くなると思います。
個々のエピソードは非常に楽しく読めましたし、キャラクター造形も面白いと思いました。が、世界観説明とシーン描写でどうしても展開が止まってしまって、物語に入り込みきれない印象がありました。両面的に読者の情報量が積み上がって終盤へ向かっていく読ませ方をできればより面白くなると思います。
神官の少女と冒険者の少女(主人公)のコンビが、勇者の旅がうまくいくように、先回りしていろいろ頑張ろうとする本作。序盤の助走的な展開な流れがやや長めに感じたが、二人が旅立ってからはテンポもよくなってくる印象。主人公の過去が出てきてから面白さも増していき、また、しっかりと伏線が張られていたのもよかったと思います。バトル描写もうまく、ちゃんと強いボス敵との戦闘も楽しめました。当代勇者がなかなか作中に登場してこないのも個人的には好みでした。
私が帰りたい場所は ~居場所をなくした令嬢が『溶けない氷像』と噂される領主様のもとで幸せになるまで~
(応募時『私が帰りたい場所は ~私の心を解きほぐしてくれたのは
「溶けない氷像」と噂される領主様でした~』より改題)
◆ 2024年11月7日頃発売 ◆
追放先で本当の幸せを掴みました
父亡き後、義母達に虐げられていたクラウディア。領地の仕事も取り上げられ、自分が聡明と呼ばれていたことも忘れた彼女はある日、濡れ衣で平民に落とされ、南の果てのグラーツ領へ追放されてしまう。自分が幸せになることはない…そう思っていたのに、用意されていたのは温かい食事に綺麗な服、領主ユリウスの不器用ながら優しい言葉だった。
「そなたは幸せになりたいと願わなければならないんだ」
昔の姿を取り戻しつつもトラウマに縛り付けられた彼女に、ユリウスはクラウディアの聡明さでもって濡れ衣を晴らそうと持ちかけるが――
これは傷ついた少女が、公爵のもとで愛と居場所を再び取り戻す物語。
※本講評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。
うーん、満足。ほとんど言うことがない。設定とストーリー、キャラはありがちなのだけれど、するする気持ち良く読ませてくれるので、これはもう「ありがち」ではなく「古典的な王道」といって良いように思う。クラウディアとユリウスの関係も正統派のロマンスで、きちんとヤマがありオチもあるし、読後感も満足いく内容となっている。個人的にはこれくらいスタンダードな王道のお話は大好きなのだが、ただもう一つ何かパンチのある部分も欲しかったかな、というところ。
クラウディアに感情移入しやすく、文章も丁寧で、とても読みやすかったです。
王子が心配になってしまうほどお馬鹿なキャラでしたが、その分ユリウスが引き立てられていたのはよかったです。
恋愛部分、読者がニヤニヤしてしまいそうな両片想いのじれじれがもっと入っていると盛り上がりも増えてよいかなと思いました。
個人的に、ユリウスにきた縁談を片っ端から断っていたアントンが好きです(笑)。
良く書けてると思います。が、展開が早く描写が薄いためダイジェスト感のある読後感になってしまいました。飛ばされた地での苦労もなく、ご都合的に展開していくのも心地よくもあるが、それだけで押せる程の驚きや喜びも無い。
今後大きく展開していくためにはかなりの工夫が必要かと……。
展開の早さや情報量の多さは気になりましたが、文章力が高く描写も丁寧で、最後まで没頭して読ませていただきました。王道的なジャンルを新たに形にできている事を高く評価しつつ、展開でも文章構成でもいいので、目新しいアプローチは欲しかったと思います。
理不尽に実家から追い出された令嬢が追放先で幸せをつかみつつ、実家が因果応報的にひどい目に遭う、というある意味王道的な展開をしっかりやりきった作品。すごく目新しい部分があるというわけではありませんが、文章力が高く、また細かいところまで作りこまれているため、最後まで気持ちよく読むことができました。主人公が不幸続きの状態から始まるため、どうしても前半は重めになってしまいましたが、少しずつ幸せになっていくさまが丁寧に描かれており、それほどストレスは感じませんでした。
蝸牛くも 小説家/代表作『ブレイド&バスタード』『ゴブリンスレイヤー』
言うことなし。かなり満足してしまった。リーン、ハクラの掛け合いも面白く、世界観の説明描写も話のテンポを崩さない程度に収まっている。事件規模はやや小さいものの、リーンだけハクラだけでは解決できず、「すごく強いから大暴れすれば全部解決」といった単純な解決策でなく、二人揃って知恵を絞って頑張った結果なので、大変気持ち良かった。欲を言えばもうちょっとリーンとハクラの背景事情について触れたり、話のボリュームは増やしても良いかもしれない。「もっと!」という気分になってしまう。なので続きを楽しみにしています。